お役立ち健康コラム

更年期障害の症状・原因・対策について解説します

卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌が減っていく『更年期』。女性の体の健康状態を保ってくれる女性ホルモンが分泌されなくなると、その分体調面での悩みが増えていきます。

しかし、更年期だからと言って苦しいばかりの日々が続くとは限りません。きちんと対策をしていれば症状の緩和や予防ができるようになり、体調不良に振り回されない生活を送れるようにもなります。反対に、「年齢だから仕方がない」「みんな耐えているから」と症状を放置していると、『更年期障害』に悩むリスクが高くなってしまいます。そのようなリスクを避けるためには、更年期障害について適切な知識を深め、対応を考えることが必要です。

そこで今回は、更年期の症状や原因、対策について解説します。
心身とも健やかで快適な毎日を過ごせるよう、更年期についての知識を身につけましょう。

目次
  1. 1.更年期とは
  2. 2.更年期症状
  3. 3.更年期に気を付けるべきポイント
  4. 4.更年期Q&A
  5. 5.更年期チェックシート(簡略更年期指数(SMI))
  6. 6.更年期の原因について
  7. 7.更年期に太りやすい理由
  8. 8.更年期への対策方法について
  9. 9.男性の更年期について
  10. 10.まとめ

1.更年期とは

まず更年期とは、一般的に45歳前後の女性に訪れる体調の変化のことです。45歳から55歳までに卵巣の機能が低下するため、それによって女性ホルモンの分泌が減少します。

実際に、女性のライフサイクルや体調は、女性の体に備わった女性ホルモンによって支えられていると言っても過言ではありません。

  • 初潮を迎え、女性ホルモンが働き始める『思春期(10代~20代まで)』
  • 女性ホルモンの分泌がピーク状態になる『性成熟期(20代~40代まで)』
  • 女性ホルモンの分泌が低下する『更年期(45歳ごろから55歳ごろまで)』
  • 女性ホルモンの分泌がされなくなる『老年期(60代以降)』

上の箇条書きからわかるように、女性の体は女性ホルモンの働きとの関係性が深く、その変化によって大きく左右されます。

性成熟期と老年期のあいだにある更年期は、これまでピーク状態で分泌されていた女性ホルモンが、完全に分泌されなくなるまでに体が慣れるまでの時期と言えます。

更年期は体調を崩しやすくなる

「更年期には女性ホルモンの分泌が低下する」と言われていますが、女性ホルモンの分泌がいきなり完全になくなることはありません。毎月のように訪れていた生理のタイミングが不安定になり、不正出血をはじめとする異変が起こった後に閉経が起こり、その時点で更年期に入っていく流れが一般的なパターンです。

閉経後も女性ホルモンの分泌自体は続いていますが、性成熟期と比較すると明らかに減少していることには変わりないため、体や自律神経がその変化に対応しきれなくなります。その結果として起こるものが、更年期症状です。

また、更年期症状は体力的なものから精神的なものまであり、また時期によって症状が変わります。症状や時期に合わせての対応が必要となってくることから、自己判断ではなく専門家による治療やアドバイス、ケアが求められるようになります。

2.更年期症状

更年期では、女性ホルモンの分泌低下に体が適応できない状態が続きます。
また、特に女性ホルモン『エストロゲン(卵胞ホルモン)』は妊娠や出産だけでなく女性の健康を支えるための重要な働きを持つホルモンです。そのエストロゲンの分泌が減少することにより、筋肉や骨、自律神経の状態などを良好に保てなくなり、心身ともに苦しい症状が増えていきます。

2.1.更年期症状は、2つの時期で分かれる

更年期症状の出方には個人差があり、また出る症状も時期によって異なるという特徴があります。40代後半から出る『早い時期の症状』と50代後半から出る『遅い時期の症状』で分かれるケースが多いです。

  • 早い時期の症状

    40代後半から目立ち始める早い時期の症状は、

    • のぼせやほてり、突然の発汗などの『ホットフラッシュ』
    • めまいや頭痛、不眠などの自律神経の乱れと関係する不調
    • 抑うつ、イライラ感、不安感などの精神的な不調
    • 思考力低下
    • 冷え性
    • 動悸
    • 疲労感

    などがあります。

    上記からわかるように、更年期の早い時期の症状にはさまざまなものがありますが、なかでもホットフラッシュを経験する女性が多いです。月経周期の乱れや不正出血が出始めるころにあらわれるホットフラッシュでは、「暑い場所にいるわけではないのに上半身が熱くなる」「下半身は冷たいのに、上半身が異様に熱い」「突然、汗をかくようになった」などの異変が出やすくなります。

    ホットフラッシュをはじめ、早い時期に多くの不調があらわれる原因は、女性ホルモンの分泌低下によって体の機能が混乱状態にあるためです。エストロゲンの分泌が減ると、血管の収縮や拡張、体温調整の役割を担う自律神経が、正常に機能できなくなります。これにより、ホットフラッシュや精神的な不調、冷え性などの不調が増えていきます。これらの症状のほか、むくみやドライマウス、胃もたれや便秘・下痢などの症状が出るケースも少なくありません。

  • 遅い時期の症状

    更年期の遅い時期に該当する50代以降には、エストロゲンをはじめとする女性ホルモンの分泌はほとんどなくなります。
    その結果、

    • 血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが増える『脂質異常症』
    • 血糖値が正常値よりも高くなる『耐糖能異常』
    • 場合によっては命の危険にもかかわる『動脈硬化症疾患』
    • 骨がもろくなり、骨折のリスクが高まる『骨粗しょう症』
    • 肩こりや腰痛、手指・肘・膝などの関節の痛み
    • 皮膚のかゆみや乾燥、知覚過敏
    • 記憶力や判断力、理解力、計算力、言語理解能力などの『認知機能の低下』
    • 『子宮脱』『尿失禁』『萎縮性膣炎』など、排せつや女性器にかかわる不調

    などが多くなります。

    遅い時期の症状として特徴的な点は、筋肉や骨量の減少、認知力の低下、泌尿器や生殖器など、体力的な不調が目立つことです。さらには糖尿病のような病気や動脈硬化症など、危険な病気につながる症状も増えていくことから、遅い時期の更年期症状にはできるだけ早めの治療とケアが必要不可欠です。「最近になってから不調が増えている」「筋肉や骨が弱くなっているからか、体が動かしにくい。それにつれて痛みや不調が増えている」と感じているのなら、できるだけ早くに医療機関を受診して検査を受けましょう。

2.2.更年期障害に注意しましょう

更年期症状の程度には個人差があり、それほど深刻に悩まない方もいれば、精神的な不調を感じたりまともに生活を送れなくなったりするほどに悩む方も少なくありません。そのため、女性の多くが経験する症状だからと言って油断せず、必要な検査や治療を受けることが大切なポイントです。

更年期症状が悪化すると、日常生活に支障が生じる『更年期障害』につながるリスクが高まってしまいます。更年期症状を経験する45歳から55歳は、女性のライフステージでも大切な時期だからこそ、生活の質を落とさないように気を付けましょう。

精神的な不安が更年期症状を悪化させる原因に

更年期を迎える年齢は、子供の自立や夫婦間の摩擦、介護などの家庭問題や、職場での出世、容姿の衰えや人生の振り返りなど、あらゆる意味で変化が多い時期です。そのような変化や悩み事が重なった結果、精神的なストレスが強くなり、更年期症状が深刻化するケースも珍しくありません。

体力的なストレスに加えて精神的なストレスを増やさないためにも、更年期症状が出てきたら1日でも早く治療やケアを始めましょう。

3.更年期に気を付けるべきポイント

女性ホルモンの分泌低下を原因とする更年期症状には、専門家による状態の把握や治療が必要です。まずは医療機関を受診して症状の原因を確認し、ご自分の状態にあった治療や毎日のセルフケアで、症状の緩和や予防に努めましょう。

医療機関では、主に『ホルモン補充療法(HRT)』『漢方療法』などの治療が行われます。症状の程度や原因に合わせ、ほかの薬物療法や精神療法が選択されることもあります。

個人レベルでできるセルフケアには、規則正しい生活や栄養バランスの整った食事、ストレス対策などが有効です。特に更年期になってから目立ちやすい冷え症への対策を徹底し、不快症状を少しでも減らせるように意識しましょう。

専門家による治療と生活リズムの改善をすることで、心身ともに不調が増えやすい更年期を快適に過ごせるようになります。

更年期の症状について

更年期の症状は、45歳前後であらわれる『早い時期の症状』と55歳前後であらわれる『遅い時期の症状』で分かれます。それぞれの時期で症状の出方や特徴が変わるため、時期ごとに応じた対策が必要です。

早い時期にあらわれる症状

早い時期にあらわれる症状としては、『ホットフラッシュ』『めまい、頭痛、不眠』『疲労感』『動悸、息切れ』『不安、イライラ、抑うつ』『太りやすくなる』などがあります。女性ホルモンの分泌が低下し始めることに、体や自律神経が十分に対応できないことが原因です。

  • 1.ホットフラッシュ

    顔全体や首筋など、上半身が突然熱くなり、のぼせやほてりのような症状があらわれます。熱く感じる場所は上半身のみで、腰や足などの下半身は冷えていることも、ホットフラッシュの特徴です。また、場所や時間帯に関係なく急激に汗をかくことも増え、そのせいで眠りの質が落ちるケースも多いです。

    女性ホルモンの分泌量が減少すると、脳の視床下部が混乱した状態になり、自律神経の調節機能がダメージを受けます。これにより、体温調節が難しくなり、ホットフラッシュが起こりやすくなります。

  • 2.めまい、頭痛、不眠

    ぐるぐると回るような『回転性めまい』、体が宙にふわふわと浮いているような『浮遊性めまい』、立ちくらみのような症状が目立つようになります。めまいにともなって耳鳴りや吐き気を伴うケースも多いです。

    頭痛は、頭が締め付けられるような『筋緊張性頭痛』よりも、頭の片側がズキズキと痛くなる『片頭痛』がよく出るようになります。自律神経の機能が乱れ、体調を健康的に保てなくなることが原因です。

    不眠においては、寝つきが悪くなる『入眠障害』や眠りが浅くなる『熟眠障害』、途中で目が覚める『中途・早朝覚醒』などの3つのタイプの症状があらわれます。不安や抑うつなどの精神的な不調や、突然汗をかいたり上半身が熱くなったりするホットフラッシュが原因だと考えられています。

  • 3.疲労感

    以前と比べて体が疲れやすく、「すぐに横になりたい」「何事にもモチベーションがわかない」「だるい」などの不調が目立ち始めます。このような疲労感は、更年期を迎えた女性の多くが経験する症状です。

    ただし肝臓や腎臓などの病気や貧血など、ほかの病気が関連している可能性も考えられるため、症状が長引くのであれば、なるべく早くの医療機関の受診をおすすめします。

  • 4.動悸、息切れ

    「理由がないのに、突然心臓がどきどきして落ち着かなくなる」「脈拍が速くなる」「息切れが起こりやすい」などの症状が出る場合、更年期による自律神経失調症状に悩んでいる可能性が高いです。循環器系や甲状腺、血液、肺の病気が関係している可能性も否定できないことから、自己判断せずに医師による検査を受ける必要があります。

  • 5.太りやすくなる

    女性ホルモンの減少によって内臓脂肪が増え、太りやすい体質になってしまいます。体重増加や肥満は体にダメージを与えるリスクが高いため、更年期を迎えたら体重を増やさないように気を付けましょう。できる限り毎日続けられる運動とバランスの整った食生活で、体重や体型を管理することが大切なポイントです。

  • 6.冷え性

    それまでは気にならなかったのに、更年期を迎えてから冷え症に悩むようになるケースがあります。「夏でも手足が冷える」「入浴後も体が冷えている」「腰から下が冷たい」などの症状には注意しましょう。冷えに伴い、自律神経失調症場や肩こり、下痢・便秘、アレルギー症状、頭痛や腰痛、むくみ、倦怠感や疲労感などの症状が増えるリスクも高くなります。

  • 7.不安、イライラ、抑うつ

    女性ホルモンの分泌低下が自律神経の機能にダメージを与え、不安やイライラ、抑うつ症状など、精神的な不調を引き起こすケースも多いです。急激に減少する女性ホルモンに体が適応しきれず、自律神経が混乱状態になることが原因です。抑うつ症状に伴い、頭がぼんやりとする思考力低下のような症状が出るケースもあります。

    精神的な不調にはストレス対策や気分転換が役立ちますが、症状があまりにも重かったり長引いたりする場合は、一度心療内科や精神科を受診しましょう。

    心療内科や精神科を受診する際に、「精神的におかしくなってしまったのかもしれない」と思い、受診をためらう方が少なくありませんが、恥ずかしく思うことはありません。更年期症状として精神的な不調があらわれることは、体のメカニズムを考えればいたって自然な減少です。受診をためらって治療が遅れることによって症状が悪化するケースも避けられなくなるため、早めに医療機関での検査や治療を受けるほうが、体力的・精神的な負担を軽減することにつながります。

遅い時期にあらわれる症状

遅い時期にあらわれる症状としては、『脂質異常症』『耐糖能異常』『動脈硬化症疾患』『骨粗しょう症』『肩こり、腰痛、関節痛』『皮膚トラブル』『認知機能の低下』『子宮脱』『尿失禁』『萎縮性膣炎』などがあります。女性ホルモンの分泌がほとんど完全にされなくなり、筋肉や骨、生殖器、泌尿器の機能などが衰えることが原因です。

  • 1.脂質異常症

    血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが急増し、善玉コレステロールが減少します。更年期によってエストロゲンが減少すると、善玉コレステロールと悪玉コレステロールのバランスを正常に保てなくなるため、このような異変が起こるようになります。中性脂肪の増加は内蔵型肥満につながり、さまざまな生活習慣病の原因となりえるため、注意が必要です。

  • 2.耐糖能異常

    血糖値が正常な状態よりも高くなることを、『耐糖能異常』と呼びます。血糖値をコントロールする働きを持つエストロゲンが減少し、インスリンの働きが減少することが原因です。

    糖尿病ほどの深刻さはありませんが、いわゆる『糖尿病予備軍』と言われるケースがおおく、また『心筋梗塞』や『脳卒中』などのリスクが高くなります。

  • 3.動脈硬化症疾患

    『心筋梗塞』『狭心症』などの心臓の病気、『脳卒中』『脳梗塞』『脳血栓』などの脳の病気、『大動脈瘤』『大動脈解離』などの大動脈の病気を、まとめて『動脈硬化症疾患』と呼びます。

    このような病気の原因は、糖尿病や高血圧、肥満、喫煙の習慣、脂質異常症などとの関係性が深いと考えられていますが、女性ホルモンの減少も原因のうちの一つです。エストロゲンは血管の拡張や細胞の働きをサポートし、脂肪やコレステロールの代謝をスムーズにする役割があるため、更年期によって減少するとそれらの動きが機能しなくなります。そのため、更年期を迎えてから動脈硬化症疾患に悩む方は、実際に多いです。

  • 4.骨粗しょう症

    骨内のカルシウムの量が減少し、骨が弱くなることにより、骨折しやすい状態になります。背骨や腰の骨、腕、あばら骨、手首などがダメージを受けやすいと考えられています。

    特に背骨や腰の骨はご自分でも気づかないうちにダメージを受けているケースが多いため、「背中や腰を伸ばせなくなった」「身長が縮んだ気がする」「いつも鈍い痛みを感じる」という場合には、注意が必要です。また、軽く転んだりひねったりしただけでも骨折につながるリスクも高くなるため、更年期を迎えたら骨を健康な状態に保つ努力を心がけましょう。

  • 5.肩こり、腰痛、関節痛

    エストロゲンの減少によって自律神経の乱れが起こり、血行が悪くなることにより、肩こりや腰痛、手指やひじ、膝の関節に痛みが出るようになります。

    肩こりや腰痛は、適度な運動を無理のない範囲で続け、血行を改善することである程度緩和できます。関節痛が長引く場合は医療機関を受診し、必要な治療を受けましょう。

  • 6.皮膚トラブル

    エストロゲンの減少によってコラーゲンやヒアルロン酸が失われ、しわやたるみ、皮膚の乾燥など、トラブルが増えていきます。気温や湿度の変化、衣服の刺激を受け、更年期前よりも肌が敏感になるリスクもあります。激しいかゆみや不快感を伴うケースも多いため、医療機関での治療や毎日の健康管理でしっかりと皮膚をケアしていきましょう。

  • 7.認知機能の低下

    記憶力や判断力、理解力、計算力、言語理解能力などが低下し、日常生活で不便な思いをすることが増えます。認知機能の低下にはさまざまな原因がありますが、エストロゲンの減少との関係性も無視できないと考えられています。運動で血流を高めたり気分転換を楽しんだりして、脳を守る生活を心がけ、症状悪化を防ぎましょう。

  • 8.子宮脱

    子宮を守る体の組織が弱くなり、子宮の位置が下がってしまいます。その状態が続いたり悪化したりすると、排泄に問題が生じたり出血や不快感を伴ったりするリスクも高くなるため、早い段階から医療機関を受診して必要な治療を受けることが大切なポイントです。

  • 9.尿失禁

    エストロゲンの減少や加齢によって骨盤底筋群が弱り、咳やくしゃみなどのわずかな動きでも失禁してしまうようになります。

    尿の失禁は女性にとって恥ずかしいことのようにも思われますが、更年期に多い症状でもあるため、深く気にする必要はありません。適切な治療やトレーニングを受けていれば、十分に改善が可能な症状でもあります。1日でも早く医療機関を受診し、必要な治療やケアを始めましょう。

  • 10.萎縮性膣炎

    膣の乾燥やひりひりとした痛み、かゆみや出血、おりものなどの不調が目立つようになります。エストロゲンが減少し、膣の健康状態が良好に保たれなくなることが原因です。場合によっては臭いが出るケースも少なくありません。

    萎縮性膣炎も専門家による治療が必要であるため、できるだけ早くに婦人外来や更年期外来を受診しましょう。

気になる症状があれば、すぐに対策を考えましょう

上記のような更年期症状は、「更年期は女性であれば経験するものだから、仕方がない」「我慢するしか方法がない」とあきらめてしまう女性の方が多いですが、適切な治療やケアを心がけていれば症状緩和は決して不可能ではありません。我慢していると更年期障害にまで悪化するリスクも高いため、放置せずに治療やケアを受け始める必要があります。

更年期症状と上手に向き合い、健康的で快適な毎日を過ごせるように心がけましょう。

4.更年期Q&A

更年期や更年期症状について、皆さまから寄せられるご質問をまとめました。
更年期症状に適切に対応するためにも、ぜひご活用ください。

更年期とは何ですか?

女性の方の体に起こる変化のことです。
卵巣機能の低下によって女性ホルモンの分泌が減少し、心身ともに多くの痛みや不調があらわれるようになります。
女性ホルモンは妊娠や出産、生理だけでなく、

  • 肌や髪の質を整える
  • 筋肉や骨を良い状態に保つ
  • 血管の収縮や拡張をサポートし、血流を良くする
  • 自律神経の機能を支える
  • 悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす
  • 糖代謝や脂質代謝をサポートする

など、女性の体の健康を支えるために重要な役割を担っています。
しかし、更年期によって女性ホルモンの分泌が低下すると、体力的・精神的な症状が増えてしまいます。

更年期はいつ起こりますか?

一般的には、45歳から55歳のあいだで起こると考えられています。
また、更年期が始まる前には、生理不順のような症状(間隔や周期の乱れ、出血量の変化)があります。この変化に応じて閉経が起こるため、ある程度の年齢を重ねて生理不順が起こっているのなら、更年期が始まるサインである可能性が高いです。

更年期にはどのような症状がありますか?

例えば更年期初期の症状には、ホットフラッシュ(急な発汗や上半身のほてり、のぼせ)、動悸や息切れ、不眠、抑うつ・不安・イライラ感などの精神的な不調、冷え性や疲労感などが多いです。さらに年齢を重ねると、脂質異常症や耐糖能異常、動脈硬化症疾患、骨粗しょう症、肩こり・腰痛・関節痛、子宮脱や尿失禁など、筋肉や骨、代謝、泌尿器や女性器にかかわる不調が目立つようになります。

更年期初期の症状は、女性ホルモンの分泌低下に体や自律神経が適切に対応できないことが原因です。閉経を迎えてもなお女性ホルモンの分泌自体は続いていますが、20~40代のころよりは大幅に減少しているためです。更年期後期では女性ホルモンの分泌がほとんど失われることから、筋肉や骨などの体の機能が弱り、体力的な症状が多くなります。

更年期症状には個人差があるのですか?

更年期症状は45歳から55歳の女性が経験するものですが、すべての方が辛い症状に苦しむというわけではありません。それほど辛く感じずに乗り越える方も多ければ、日常生活がまともに遅れないほどの症状に悩む方も多いです。

その原因は、女性一人ひとりの体質や環境にあります。45歳から55歳のあいだは、大学進学や就職に伴って子供が自立したり、夫婦関係にすれ違いや摩擦が生まれたり、親の介護が重なったりなど、家庭環境に変化が出やすい時期です。また、職場での出世による社会的立場や責任の変化なども起こります。このような変化が精神的な負担となり、更年期症状を悪化させる原因になるケースは珍しくありません。

45歳を過ぎてから、気分の落ち込みが激しくなっています。うつ病でしょうか?

更年期症状によって抑うつ症状が起こっていると考えられます。更年期には自律神経の不調やセロトニンの減少が起こるため、それに応じて気分の落ち込みも出やすくなります。閉経を迎えてから、気分の落ち込みや不安感などの症状が出ているのであれば、更年期が関係している可能性が高いです。

このような症状に心当たりが出ている場合には、ストレスを軽減する生活を心がけましょう。できるだけ無理のない生活ペースを守り、心が落ち着かなくなったら適度な気分転換や親しい人とのコミュニケーションを取り入れてみるといいでしょう。また、更年期症状は専門家による検査や治療も必要となるため、ほかの症状にも対応できるよう、早めに医療機関を受診されることもおすすめします。

ただし、更年期症状による抑うつ症状ではなく、本物のうつ病が隠れている可能性も否定できません。「どんなときでも気分が落ち込んでしまう」「家事や仕事、食事もまともにできないほど苦しい」などの症状が目立つ場合には、1日でも早くに医師の診察を受けましょう。

20代や30代でも更年期になりますか?

一般的に、更年期は45歳から55歳までの女性に起こると考えられていますが、20代から30代の女性に似たような症状が出るケースもあります。生理不順やホットフラッシュに加え、めまいや手足の冷え、頭重感、疲労感、立ちくらみやイライラ感などの症状が目立ち、俗名として『若年性更年期障害』と呼ばれることもあります。

しかし、20代や30代で経験する症状は、実際の更年期症状と同じではありません。更年期症状が卵巣機能低下による女性ホルモンの分泌減少を原因としているのに対し、20代から30代までの症状は無理なダイエットやストレス、生活習慣の乱れが原因です。そのため、栄養バランスの整った食事や生活習慣の見直し、ストレス対策などにより、症状が緩和されることもあります。

ただし、場合によっては年齢が若くても卵巣機能の低下が起こるケースも考えられるため、上記の症状が長く続くようであれば医療機関を受診しましょう。

更年期になったら、何科を受診したらいいですか?

婦人科や女性外来を受診することをおすすめします。受診する際には、現在気になっている症状についてできるだけ詳しく説明しましょう。更年期症状だけでなく、ほかの病気が隠れている可能性も低くはないため、必要に応じて検査を受けることも大切なポイントです。

更年期で気を付けることはありますか?

『医療機関で適切な治療を受ける』『生活習慣を改善する』の2つを意識しましょう。

更年期症状は女性ホルモンの分泌低下を原因としているため、自己判断によるケアのみでは対応が難しくなります。まずは医療機関で検査を受けて状態を確認し、必要な治療を受け、そのうえで生活習慣の改善で体調を整えることが理想です。

生活習慣の改善は、食生活や生活リズムの見直し、適度な運動習慣、ストレス対策などが必要です。基本的なポイントのように思われますが、規則正しい生活を心がけることで自律神経の状態が良くなり、体力的・精神的な不調を防げるようになります。また規則正しい生活は更年期症状を悪化させる冷え症の緩和にもつながるため、この機会に日々の過ごし方を振り返り、必要に応じて改善していきましょう。

失われる女性ホルモンを補うためには、サプリメントも役立ちます。ご自分に合ったものを相談しながら選び、毎日の健康管理に取り入れましょう。

5.更年期チェックシート(簡略更年期指数(SMI))

1.現在、あなたにはどんな症状がありますか?

更年期症状の出方や程度を調べるには、現在の症状を確認する必要があります。
『簡略更年期指数(SMI)』は、現時点での更年期症状や深刻度を把握するには非常に適切なツールです。多くの女性の方が訴える更年期症状から、診断・治療をスムーズに進めるため、婦人科の医師によって開発されました。以下の表から、ご自分の更年期症状がどのように出ているかを振り返ってみましょう。

以下の症状が、

  • 毎日のように出ているなら『強』
  • 毎日ではないが、毎週見られるなら『中』
  • 症状は強くないが、気になるなら『弱』

と考え、チェックしてください。

症状
①上半身が熱くなり、顔がほてる 10 6 3 0
②突然汗をかく 10 6 3 0
③腰や手足が冷えるときが多くなった 14 9 5 0
④息切れと動悸が気になる 12 8 4 0
⑤寝つきが悪く、睡眠の質が落ちている 14 9 5 0
⑥怒りやすく、すぐにイライラしてしまう 12 8 4 0
⑦気分が落ち込み、憂うつな気分になる 7 5 3 0
⑧頭痛やめまい、吐き気が出る 7 5 3 0
⑨疲れやすくなった 7 4 2 0
⑩肩こり、腰痛、手足の痛みが出る 7 5 3 0

上記の簡易更年期指数(SMI)でチェックした結果、以下のような行動指針が示されます。

合計点 行動指針
0~25点 良い調子で更年期を過ごせています。
現在の生活習慣を続け、引き続き更年期症状と上手に向き合いましょう。
26~50点 食事や運動、生活習慣に気を付ける必要があります。不健康なことをしていないか振り返り、無理をしない程度に生活改善を心がけましょう。
51~65点 医師の診察を受ける必要があります。生活指導や治療、カウンセリングなど、適切な治療で更年期症状の緩和を目指しましょう。
66~80点 更年期症状が比較的深刻なレベルになっています。半年以上にわたる長期間での治療が必要です。
80~100点 更年期症状が深刻なレベルに達しています。現在気になる症状の検査をそれぞれ受け、専門医のもとで長期的な治療を受けましょう。

特に点数が51点以上の場合、または全体の点数が低く出ていても特定の項目で高い場合には、更年期障害が出ている可能性が考えられます。そのような結果が出たら決して我慢をせず、できるだけ早くに医療機関を受診しましょう。

2.更年期と間違えられやすい症状に注意しましょう

上記の症状は主に更年期が関係すると考えられていますが、場合によってはほかの病気のサインであるケースも多いです。

  • ほてり、のぼせ:甲状腺機能亢進症、高血圧、心臓病
  • めまい、耳鳴り、難聴:突発性難聴、メニエール病、脳腫瘍、脳梗塞
  • 動悸、息切れ:狭心症、不整脈、心筋梗塞
  • 疲労感、意欲低下:慢性疲労症候群、線維筋痛症、甲状腺機能異常、貧血、うつ病
  • 不安、抑うつ、不眠:うつ病
  • 関節痛、筋肉痛:関節リウマチ、膠原病
  • 頭痛:脳腫瘍、くも膜下出血、薬剤誘発性頭痛、睡眠時無呼吸症候群
  • 不正出血:子宮体癌、子宮頸癌、子宮筋腫

更年期症状と思われる場合にも、上記のような症状が隠れている可能性も考えられます。病気によっては命の危険にかかわるものもあるため、十分に注意しましょう。気になる症状があれば診察の段階で医師に相談し、必要な検査を受けましょう。

6.更年期の原因について

女性の一生は、女性ホルモンの働きによって支えられています。

一般的に、45歳から55歳の女性は、卵巣機能の低下によって女性ホルモンの減少が起こる『更年期』を迎えます。これまでに女性の健康を支えていた女性ホルモンのサポートが得られなくなると、心身ともに不調が多くなります。更年期症状がひどくなると、生活に支障が出る『更年期障害』になるリスクが高いため、早い段階からの対策が必要です。

ここで一度、女性ホルモンと女性の体の関係性について解説します。

1.思春期

女性ホルモンには、『性腺刺激ホルモン放出ホルモン』『卵胞刺激ホルモン』『黄体形成ホルモン』『エストロゲン(卵胞ホルモン)』『プロゲステロン(黄体ホルモン)』などがあり、なかでもエストロゲンとプロゲステロンは女性の体にとって大きな意味を持っています。これら女性ホルモンは、女性が生まれてから年齢を重ねるごとに状態が変わっていき、最初に芽生えだす時期が10代から20代までの『思春期』です。

思春期以前の7歳から8歳ごろまでは、女性ホルモンが働きを始めていますが、まだ体にとってはそれほど大きな変化ではありません。とはいえ、皮下脂肪が増えたり乳房がふくらみ出したりなど、身体的な変化は見られるようになります。10歳を超えてから迎える『月経』のための、準備段階とも言えます。

女性ホルモンが本格的に活動を始めるころが、10代から20代までの思春期です。初めて月経を経験し、最初は不安定ながらも徐々に安定し、子宮や卵巣も成熟していきます。

2.性成熟期

20歳前後から40歳半ばまでは、女性ホルモンの分泌がピークを迎える時期です。生理周期が安定し、女性ホルモンが正常に機能しているために髪や肌のつやが保たれ、また一生のうちでもっとも妊娠や出産に適した時期でもあります。体つきも丸みを帯びた女性らしいイメージになり、女性としての魅力に恵まれます。

その一方で無理なダイエットやストレスによって『月経不順』『月経前症候群(PMS)』『月経困難症』などの不調も出やすくなるため、妊娠や出産、体調に悪影響をもたらさないよう、健康管理を含めた対策も必要です。

3.更年期

45歳から55歳ごろまでの更年期では、それまでピーク状態であった女性ホルモンの分泌が低下します。最後に迎えた生理から1年以上たっても何もなければ、閉経のサインです。これにより、ホットフラッシュや頭痛、めまいや冷え症などの症状が目立つケースが多くなります。

更年期には45歳前後であらわれる『早い時期の症状』と、55歳前後で出る『遅い時期の症状』があります。それぞれ特徴が異なるため、時期ごとに合わせた対応が求められます。

  • 早い時期に出る症状

    早い時期に目立つ症状は、『ホットフラッシュ』『めまい、頭痛、不眠』『疲労感』『動悸、息切れ』『不安、イライラ、抑うつ』『太りやすくなる』などです。

    早い時期の更年期症状の原因は、女性ホルモンの分泌低下による体の混乱状態です。完全には止まっていないものの性成熟期と比べて減少傾向にあるため、自律神経が混乱状態になり、心身ともに健康な状態を保てなくなります。さらに、家族の問題や社会的立場の変化などが精神的なストレスとなり、症状が悪化するケースも少なくありません。

  • 遅い時期に出る症状

    遅い時期に目立つ症状は、『脂質異常症』『耐糖能異常』『動脈硬化症疾患』『骨粗しょう症』『肩こり、腰痛、関節痛』『皮膚トラブル』『認知機能の低下』『子宮脱』『尿失禁』『萎縮性膣炎』などです。女性ホルモンの分泌がほとんどなくなり、筋肉や骨、生殖器、泌尿器の機能などが衰えることによって、不調が増えていきます。

    遅い時期の更年期には、筋肉や骨をはじめとする体の機能が弱くなってしまうため、健康な状態を保つには専門家による状態確認や治療が必要不可欠なポイントとなります。

4.老年期

55歳以降の老年期は、体が女性ホルモンによる保護を受けられなくなる時期です。更年期の遅い時期のような不調が増え、またしみやしわ、髪のパサつき、白髪など、外見上の衰えも目立ちやすくなります。

エストロゲンが減少する更年期

性成熟期と老年期のあいだにある更年期は、女性ホルモンの分泌低下による体の変化に、体が慣れる時期と言っても過言ではないでしょう。しかし、女性ホルモンの分泌が低下することは、女性の体に大きなダメージを与えます。

女性ホルモンと女性の健康の関係性

数ある女性ホルモンのうち、特にエストロゲンの減少が女性の体に与えるダメージは非常に大きいです。エストロゲンは妊娠や出産に大きく関わる女性ホルモンとして知られていますが、

  • 子宮や膣などの生殖器や、膀胱や尿道などの泌尿器の機能を正常な状態に保つ
  • 髪や肌の潤いやはりを維持するため、コラーゲンの生成をサポートする
  • 血管を強くしなやかな状態に保ち、動脈硬化症をはじめとする病気を防ぐ
  • 血管の拡張や血流改善をサポートする
  • 骨密度を良好な状態に保つため、骨を形成する細胞に働きかける
  • 筋力を保ち、筋肉の減少を防ぐ
  • 脳機能やメンタル面での健康状態を保つため、脳内神経伝達物質を増やす
  • 善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす
  • 糖代謝や脂質代謝をサポートする

など、女性の体の健康を守るためにさまざまな働きをしています。

このように、女性の健康を支えてきたエストロゲンが失われることによる影響は、決して小さなものではありません。だからこそ、更年期にはこれまで以上に慎重な健康管理と体のケアが必要になります。

長い更年期との付き合い方

平均的に、女性は45歳から55歳ごろに更年期を迎え、体力的にも精神的にも女性ホルモンの保護を受けられない状態となります。しかし、平均寿命が短かった時代は終わり、現在の女性の平均寿命は80歳以上です。つまり、閉経を迎えてから30年以上にわたり、人生が続いていく結果となります。

体も心も女性ホルモンによるサポートを受けられないなかで、30年以上も過ごしていくことは、心身ともに大変なことに感じられるかもしれません。しかし、毎日の生活で健康管理に意識を高め、無理や我慢をしないように気を付けていれば、健康的で快適な日々を送ることができます。医療機関での治療やサプリメントにより、失われた女性ホルモンを補うことも可能であるため、試してみるのも良い助けになるでしょう。

症状が気になったら、必要な対応を始めましょう

更年期をいかに健康的で快適に過ごすかは、必要な対応ができているかどうかがキーポイントになります。
医療機関で専門的な治療を受け、毎日の生活リズムを整えることが大切なポイントです。

特に更年期症状は自己判断によるケアが難しく、場合によっては更年期障害にまで悪化するリスクもあるため、症状が出てきたらなるべく早くに医療機関での検査と治療を受けましょう。医療機関での治療には女性ホルモンを補う治療や漢方薬による治療、精神療法などのさまざまな治療法があり、症状や状態、体質に合わせた方法を選ぶことができます。

また、栄養バランスの整った食事や適度な運動、規則正しい生活習慣は、ストレス対策や冷え対策に役立ちます。日常生活での無理を避け、ご自分のペースを優先した生活リズムを心がけることも、更年期対策に有効です。毎日の生活でも心身ともに良い状態に整え、更年期症状に耐えられる体質を維持しましょう。

7.更年期に太りやすい理由

1.更年期に太りやすくなる原因

45歳から55歳にかけて、「以前のように体重や体型をキープすることが難しくなってきた」と実感されている方は、決して少なくないでしょう。「若いころと同じ量を食べているのに、体重が増えてしまう」「食欲のコントロールが難しくなっている」と感じられている方も多いです。

若いときと比べて太りやすくなっている場合、更年期によるホルモンバランスの乱れや加齢が関係している可能性が高いです。ただし、更年期は女性の体に必然的に起こる変化であり、避けては通れないものでもあります。更年期を迎えても体重と体型を適切に管理するには、更年期の性質を受け止め、健康的な生活習慣を意識する必要があります。

1.ホルモンバランスの乱れ

更年期に太りやすくなる原因として特に多いものが、ホルモンバランスの乱れです。特に『女性ホルモンの分泌低下』『男性ホルモン値の上昇』が、更年期の太りやすさを助長する原因だと考えられています。

2.女性ホルモンの分泌低下

一般的に、45歳から55歳のあいだに訪れる更年期には、卵巣機能が低下すると同時に女性ホルモン『エストロゲン』の分泌が大量に減少します。
エストロゲンは妊娠や出産、髪や肌の潤いや女性の体の健康状態をサポートするために非常に大切な役割を担っていますが、体重や体型を適切な状態に管理するためにも欠かせない女性ホルモンです。実際に内臓脂肪を体にため込む『アルデヒド脱水素酵素』の働きを抑える働きがあり、更年期によってエストロゲンが失われるとそれが不可能となり、内臓脂肪をためやすい体質になってしまいます。

また、エストロゲンは脂質代謝をサポートする働きもある女性ホルモンです。したがって更年期でエストロゲンの保護を受けられなくなると、総コレステロールや中性脂肪、『LDLコレステロール(悪玉コレステロール)』が増加し、『HDLコレステロール(善玉コレステロール)』が減少します。これによって太りやすい体質に変わり、ひいては『メタボリックシンドローム』をはじめとする肥満が引き起こされやすくなります。

3.男性ホルモン値の上昇

閉経を迎えてある程度の年月が経ち、女性ホルモンの保護を受けられなくなった女性の体は、基本的には男性の体と同じです。女性ホルモンの分泌がされなくなり、男性ホルモンの値が上昇するためです。

女性と比べて男性は、皮下脂肪より内臓脂肪をため込みやすい傾向にあります。そのため、更年期によって男性ホルモンの値が上昇すると、内臓脂肪による肥満が起こりやすくなります。

4.加齢

更年期を迎える45歳から55歳のあいだは、加齢によって運動機能と筋肉量が低下し、エネルギー摂取の増加と消費量の低下が起こる時期です。
加齢によって運動機能が低下すると、同時に筋肉量も低下します。これによって体を動かすことがさらに億劫に感じられるようになり、肥満が加速する方が多いです。

また、加齢によって基礎代謝が下がることによって、毎日のエネルギー消費が減少することも肥満の原因になります。毎日のエネルギー消費が少なくなると、食事による摂取カロリーが消費カロリーを上回ってしまい、体重増加や体型の変化につながるためです。結果、「それほど食べていないのに太ってしまった」「今まで通り健康的な食事を心がけているつもりでも、なかなか痩せない」という悩みが目立つようになります。

ウエストが太くなったら要注意

更年期に太りやすくなることは多くの女性にとっての悩みの種となりますが、だからこそ見逃されやすいという側面も否定できません。極度な肥満はメタボリックシンドロームだけでなく、膝や筋肉への負担となりうるため、早めの体重・体型管理と肥満対策が必要です。

特にウエストが太くなってきたら肥満が始まっているサインだと考え、対策を始めましょう。履いているズボンやスカートがきつく感じられたり、ウエストにくびれがなくなってきたりしたら、肥満対策を考えるタイミングです。

2.更年期太りへの対処法

女性ホルモンの分泌がされなくなり、代謝が下がりやすくなる更年期は、今まで以上に肥満のリスクが高まります。肥満によって新たな不調を増やさないよう、食生活の見直しや適度な運動、生活習慣の改善を心がけましょう。

1.食生活の見直し

肥満対策やダイエットでもっとも大切なポイントは、食生活の見直しです。例え毎日運動をしていても、日々の食事で食べ過ぎていたりジャンクフードをやめられなかったりすると、摂取カロリーが消費カロリーを上回り、肥満を避けられなくなるためです。「運動をしているから大丈夫」と考えず、まずは規則正しい食事を意識しましょう。

基本的には、必要な栄養素がバランスよくとれるうえに脂質を取りすぎない和食がおすすめです。和食は塩分が多いことが懸念されていますが、減塩に気を付ければ十分に肥満対策ができます。食事からの満足度を高めて間食やジャンクフード、ストレスによる過食を減らし、体重と体型を維持しましょう。

また、食べる時間を守ることも、肥満対策に役立ちます。できるだけ3食食事をとり、夜遅くの食事は避けましょう。遅い時間の食事は太りやすくなるだけでなく、胃腸に負担をかけて内臓への負担を増やしてしまいます。

2.適度な運動

食生活の見直しに合わせ、適度な運動も肥満対策には欠かせないポイントです。特にウォーキングやサイクリング、軽いジョギング、水泳は、気軽に試せるうえに更年期太り対策には適しています。

更年期太りの原因は、女性ホルモンの分泌低下と男性ホルモンの値の上昇による、内臓脂肪の蓄積です。しかし、普段の生活で気を付けていれば、内臓脂肪は皮下脂肪よりも簡単に減らすことができることも事実です。食生活の見直しや運動の習慣を取り入れ、地道に内臓脂肪を減らし、健康的な体重や体型を維持していきましょう。

運動にはさまざまな種類がありますが、特に有酸素運動が内臓脂肪の減少に役立つと考えられています。無理のない有酸素運動を普段の生活で続けましょう。無理をしすぎるとケガや疲れの原因となり、運動へのモチベーションが下がってしまうため、体調に配慮しながら有酸素運動を継続すると良いでしょう。

3.体重をはかる習慣を身につけましょう

ダイエットをしている方に限らず、体重や体型は日々しっかり管理をしていなければ変わっていってしまうものです。「気づかないうちに太ってしまう」「太りやすくなった」と悩んでいる方は、定期的に体重をはかる習慣を身に着け、体重を管理する意識を高める必要があります。

毎日や2日おき、1週間おきなど、ご自分のペースで、体重を記録してみましょう。体重の変動をしっかりと把握しておくことで、食べすぎや食生活の見直し、運動の量など、体重や体型を保つコツがわかりやすくなります。わずかな体重の増減に一喜一憂する必要はありませんが、ご自分の体重の減り方や増え方を理解しておくことは、今後の健康を良好に保つためには大いに役立ちます。

4.規則正しい生活も、更年期太り対策になります

更年期太り対策で最後におすすめするポイントは、毎日の生活リズムを整えることです。
昼夜逆転の生活や夜更かし、睡眠不足は自律神経のバランスを乱します。自律神経の機能が適切に動かなくなるとストレスがたまり、ご自分でも止められないほどに食べ過ぎてしまったり不健康な食事がやめられなくなったりなど、肥満につながってしまいます。

可能な限り早寝早起きを心がけ、太陽の光を浴び、無理でなければ積極的に体を動かす生活を続けましょう。規則正しい生活は体重・体型管理でなく、心身ともに良好な状態に整えてくれるため、更年期を快適に過ごすには非常に役立つポイントです。

8.更年期への対策方法について

1.医療機関での治療

女性の健康を心身ともに追い詰める更年期症状は、卵巣機能の低下による女性ホルモンの減少を原因としています。症状は一般的に45歳から55歳まで続き、程度には個人差があるものの、ひどい場合には日常生活がまともに送れなくなる『更年期障害』に苦しむケースも少なくありません。このようなリスクを避けるためには、更年期症状を決して放置せず、まずは医療機関での治療を受ける必要があります。

医療機関での治療には、『ホルモン補充療法(HRT)』『漢方療法』『精神療法』『その他の薬物療法』など、症状に合わせた方法があります。また、症状の状態を確認したりほかの病気が潜んでいないかを確かめたりするために、治療前の検査も必要です。

  • 1.ホルモン補充療法(HRT)

    現時点では、更年期症状への治療法としては、ホルモン補充療法と漢方療法の2種類が主に選択されています。

    まずホルモン補充療法とは、卵巣機能の低下によって失われる女性ホルモンを専用の薬剤で補い、更年期特有の症状を緩和させる方法です。薬剤の種類は経口タイプやテープ、塗り薬や挿入タイプなどのさまざまな種類があり、女性一人ひとりの症状や状態に合わせて種類や投薬タイミング、投薬期間を選んでいく方針がとられます。

    ホルモン補充療法のメリットは、数ある更年期治療のなかでも即効性に優れている点と、幅広い症状に対応できる点です。減少する女性ホルモンの補充に特化した方法であるため、さまざまな面でメリットが大きいとされ、漢方療法とともに重宝されています。

    ホルモン補充療法では副作用が心配されるケースがありますが、よほど深刻な健康被害が出ない限りは問題ないとも言えます。また、副作用自体は服用期間が長くなるにつれて軽快していくケースが多いです。

  • 2.漢方療法

    「ホルモン補充療法の副作用が気になる」「即効性を期待する必要はないけれど、体質改善をしながら更年期症状と向き合いたい」というような悩みや希望がある方には、漢方療法がすすめられます。

    漢方療法では、東洋医学をベースに薬を処方し、更年期症状の緩和を目指します。患者一人ひとりの体質や体型に合わせて薬を選ぶ形が一般的です。更年期症状の漢方薬は更年期外来や女性外来、または漢方外来などで処方してもらえます。市販薬を使う場合には、漢方薬専門の薬剤師が在籍する薬局を選ぶようにしましょう。

    漢方療法はホルモン補充療法に比べて即効性に優れた方法ではありませんが、副作用のリスクが極めて低いことで注目されています。局所的な解決を促すというよりは体質改善を目的にした方法でもあるため、症状だけでなく全体的な体調が良くなるというメリットもあります。

  • 3.精神療法

    不安感やイライラ感、抑うつなどの症状が出ている場合には、精神療法が有効です。カウンセリングや認知行動療法によって現在の問題を客観的に把握し、考え方や行動を前向きにとらえながら解決策を探していきます。

    更年期では精神的なストレスも強くなるため、心のケアは欠かせないポイントです。カウンセラーに話を聞いてもらうだけでも問題が解決するケースも多いことから、精神的な症状が目立つ場合には精神療法も活用してみましょう。

  • 4.その他の薬物療法

    ホルモン補充療法や漢方療法などと離れた観点から、薬物治療が行われるケースもあります。自律神経機能を調整する薬や専門的な対応が必要になる症状に対し、専門医が薬を処方するパターンです。

    その他の薬物療法にもさまざまな方法があり、それぞれメリットやデメリットが出てくるため、問題が生じる場合には主治医と相談しながら調節していく必要があります。薬を服用しているあいだに何か異変を感じたら遠慮せずに伝え、今後の方向性を調整してもらいましょう。

  • 5.医療機関での検査

    更年期症状に対する医療機関での検査は、『問診』『内診』『血液検査』の3つです。

    問診では初経の年齢や出産歴の有無、生理周期や直近の生理について、またこれまでにかかった病気や薬、現在抱えている症状や家族の状態などを質問されます。内診では子宮や卵巣の状態を確認し、血液検査では血液中のホルモンのほか、脂質異常や肝機能障害など、更年期症状以外の病気が出ていないかを調べていきます。

    更年期症状に対して医療機関での治療が進められる理由は、必要な検査を受けられることです。検査で現状を把握することにより、症状の原因やほかの病気の有無などが確認できるため、症状が気になりだしたらなるべく早めに医療機関を受診しましょう。

2.ご自分でできるセルフケア

更年期症状と上手に付き合っていくには、医療機関での治療と合わせて生活習慣の見直しも大切なポイントです。
私たちの体調は、普段の生活リズムや食生活、運動の習慣によって大きく左右されます。不規則な生活を続けていると自律神経が乱れ、体力的にも精神的にも不調が増えていきます。そのような不調が更年期症状を悪化させないよう、毎日の生活リズムを整えましょう。

1.規則正しい生活リズム

  • 早寝早起きを心がけ、朝起きたら日の光を浴びて体内のセロトニンを増やす
  • 塩分を控えた和食や栄養バランスの整った食事で、食べすぎや肥満を防ぐ
  • ストレッチやウォーキング、無理のない筋肉トレーニングなど、適度な運動を取り入れる
  • ストレスをためないように気を付け、適度に気分転換をする
  • 毎日入浴する習慣を作り、体の冷えを防ぐ

上記のポイントは、更年期を迎えた際には一層気を付けていきたいポイントです。

規則正しい生活リズムが整うと、ストレスや冷え症を防げるようになります。精神的なストレスは体力的なストレスの原因となり、冷え性はあらゆる更年期症状や肥満を引き起こすリスクが高いため、ストレスや冷え症に悩まない生活を目指す必要があります。

2.大豆製品やカルシウム、ビタミンDをとる

更年期症状を和らげるためには、大豆製品やカルシウムを含む食品をとることもおすすめです。

特に豆腐や納豆、豆乳などに含まれるイソフラボンは、体内でエストロゲンと似た働きをすると考えられています。その事実もあり、日本人の女性は外国人の女性よりも深刻な更年期症状に悩まないとも言われているほどです。一度に多くとるよりは毎日の食生活に取り入れ、日々イソフラボンを補えるようにしておくといいでしょう。

骨を形成するカルシウムは神経の興奮を抑えたり、血液や筋肉の働きを支えたりするのに役立ちます。牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品や、鮭やしらすなどの魚に多く含まれているため、このような食品も積極的に食べるようにしましょう。カルシウムの代謝に必要なビタミンDは、日光を浴びることによって体内で増やせます。カルシウムの働きを最大限にサポートするためにも、できるだけ外に出る習慣を作り、日の光を浴びましょう。

3.必要に応じてサプリメントの活用も

エストロゲンと似た働きをするイソフラボンは、サプリメントからの摂取も可能です。例えば大豆イソフラボンから作られる『エクオール』のサプリメントは、体内で吸収された大豆イソフラボンの働きを強めてくれます。大豆イソフラボンを効率的に体内に入れるためにも、ぜひサプリメントも検討してみましょう。

9.男性の更年期について

1.男性更年期障害とは

更年期症状や更年期障害は女性のみに起こるものだと考えられていますが、男性に同じような不調が出るケースもあります。実際に、男性に起こる更年期障害のことを『LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群』と呼びます。

女性の更年期が45歳から55歳くらいの年齢で訪れるのに対し、男性更年期障害は一般的に35歳前後から50歳くらいの年齢でやってくるケースが多いです。また男性の性ホルモンは女性ホルモンとは異なり、徐々に減少していく傾向が強く、症状自体もそれほど辛く感じられることがないケースが多いとされています。しかし、35歳前後や50歳くらいの年齢は男性にとって働き盛りの大切な時期であるため、更年期障害による不調が生活面での大きなストレスになりうるリスクも否定できなくなります。

女性の更年期が避けられない症状であると同じように、男性のホルモン低下も避けて通れない体の変化です。しかし、「年齢だから仕方がない」「仕事が忙しくて病院に行く時間もないので、割り切って考えている」と放置すると、生活への悪影響や症状の悪化につながってしまいます。「最近、少し体調が悪い」と思った時点で、医療機関の受診や生活改善をはじめ、心身ともに健康な状態を保てるようにしましょう。

症状

男性更年期障害には、非常に多くの症状があります。例に挙げると、

  • ほてりやのぼせ、発汗
  • 耳鳴り、めまい、頭痛
  • 動悸、呼吸困難
  • 睡眠障害
  • 全身の倦怠感
  • 冷え性
  • 不安、イライラ感、うつなどの精神的な症状
  • 筋肉量の低下
  • 頻尿
  • 性欲低下や勃起力低下
  • 物忘れ
  • ひげが薄くなる

など、男性一人ひとりによって症状や程度が異なるものの、女性の更年期症状と同じように幅広い症状が目立つことがわかっています。

「年のせい」で放置すべきでない男性更年期障害

男性の更年期障害は女性の症状と比べて緩やかに進行するため、症状があっても放置してしまう男性が少なくありません。しかし、男性の更年期障害に対して適切な治療やケア、検査を受けていなければ、想像以上に深刻な健康面でのリスクに見舞われる結果となります。

男性更年期障害が進行すると、メタボリックシンドロームや心筋梗塞、脳梗塞、あるいはがんなど、最悪の場合には命の危険にかかわる病気のリスクが高くなります。男性ホルモンは男性の健康を支えるために重要な働きを持っていて、失われることによるダメージが大きいためです。

男性更年期障害は女性の更年期症状と同じように、治療やケアを受けていれば症状緩和が期待できるようになります。だからこそ、「年齢のせいだから」とあきらめず、可能な限りでの対策を考え始めましょう。

2.男性更年期障害チェックリスト

男性更年期障害に何らかの心当たりがある場合、ほかに気になっている症状がないかを確かめてみることおすすめします。

以下の表は、男性更年期障害を診断するうえで世界的に採用されている『AMSスコア』です。当てはまる症状が多ければ多いほど男性更年期障害を抱えている可能性が高く、深刻化していると考えられます。心当たりのある症状や程度を点数にして、ご自分の状態を把握しましょう。

症状 なし 軽い 中程度 重い 非常に重い
①全体的に体調が優れない 1 2 3 4 5
②関節や筋肉に痛みがある 1 2 3 4 5
③ひどい発汗が気になる 1 2 3 4 5
④睡眠の質が低下している 1 2 3 4 5
⑤眠くなったり、疲れたりするときが増えた 1 2 3 4 5
⑥イライラする 1 2 3 4 5
⑦神経質になっている 1 2 3 4 5
⑧不安感がある 1 2 3 4 5
⑨体の疲労や行動力の低下が気になる 1 2 3 4 5
⑩筋力が低下している 1 2 3 4 5
⑪憂うつな気分になる 1 2 3 4 5
⑫「絶頂期は過ぎた」と感じる 1 2 3 4 5
⑬「力尽きた」「どん底にいる」と感じる 1 2 3 4 5
⑭髭の伸びが遅くなっている 1 2 3 4 5
⑮性的な能力が衰えている 1 2 3 4 5
⑯早朝勃起の回数が減少している 1 2 3 4 5
⑰性欲が低下している 1 2 3 4 5

これらの項目から心当たりがある症状を数字で計算してみて、

  • 27~36点の場合は、軽度の男性更年期
  • 37~49点の場合は、中程度の男性更年期
  • 50点以上の場合は、高度の男性更年期

が出ていると言えます。程度が深刻であればあるほどに自力での対応が難しくなりますので、少しでも体に異変を感じていたら早めの行動を心がけましょう。

3.男性更年期障害の原因

男性更年期障害は、加齢やストレス、環境の変化を原因として起こります。これらの原因により、血液中の男性ホルモン『テストステロン』が減少し、上記に挙げたような症状があらわれるようになります。

テストステロン自体は、10代前半ごろから急激に増加して20代でピーク状態となり、その後は緩やかに減少していくケースが多いです。平均的には30代から40代、55歳前後で症状に悩む男性がほとんどとなり、病院で治療を受ける方は50代から60代が大多数です。まれな例となりますが、70代から80代になって男性更年期障害に悩む方もいます。

加齢に加え、ストレスや環境の変化がテストステロンの減少を加速するケースも少なくありません。女性ホルモンと同様に、男性ホルモンの分泌は大脳の視床下部からの指令を受ける仕組みになっています。しかし仕事や家庭問題などによってストレス状態にさらされると、自律神経における交感神経が優位な状態が続き、大脳がテストステロン分泌の指令を出せなくなってしまいます。特に男性は仕事でのストレスを強く受けることが多いため、そのたびに体や大脳、男性ホルモンがダメージを受けているともいえるでしょう。

年齢に応じてテストステロンが減少することは自然な現象ともいえますが、それにより健康へのダメージが避けられないことには変わりません。

4.男性更年期障害への対処法

男性更年期障害は自己判断によるケアが難しく、専門的な検査や医師による判断が必要となるため、まずは医療機関の受診が必要です。医師の診察や検査を受けた後、症状緩和のために適切な治療方法を決めていく流れとなります。

診断

男性更年期障害専用の検査を通じ、血液中のテストステロンの量を確認します。検査により、『遊離型テストステロン』の量が8.5pg/ml以上~11.8pg/ml未満と出た場合、テストステロンの明らかな減少が考えられるでしょう。遊離型テストステロンが8.5pg/ml以下と出ている場合には、多くのケースで更年期障害だと診断されます。

このような検査のほかにも、身体症状や精神症状、性機能に関する症状が出ていないかの検査を行うこともあります。ほかの病気が隠れていないかを調べるためにも、最初の検査をしっかりと受けるようにしましょう。

治療方法

男性更年期障害の治療法やケア方法にはさまざまな方法がありますが、ここでは『医療機関での治療』『個人レベルでできるケア』の視点から解説します。

1.医療機関での治療

病院・クリニックなどの医療機関での治療には、男性ホルモンの補充や漢方療法が選択されます。
男性ホルモンを補充する場合には、筋肉注射や塗り薬などの方法がとられるケースが多いです。年齢やストレス、環境の変化によって減少するテストステロンを人為的に補い、更年期障害による症状緩和を目指すことを目的にしています。漢方療法は体質改善を目的に、体型や体質、症状に合わせた薬を処方し、症状をやわらげていきます。男性ホルモンを補充する方法にも漢方療法にもそれぞれ特徴があり、メリット・デメリットも異なってくるため、ご自分にとって納得できる方法を選ぶといいでしょう。

2.個人レベルでできるケア

個人レベルで必要となるケアには、適度な運動と食生活の改善、ストレス対策が必要不可欠です。

  • 1.運動で筋肉を刺激し、テストステロン増加をサポート
    運動不足はテストステロン減少の原因にもなるため、量を維持するためにも可能な限りで運動の習慣を作りましょう。一人でできるウォーキングや筋肉トレーニングのほか、他人と組んでの競技もおすすめです。チームワークや競技で仲間意識や競争意識を刺激されることにより、テストステロンの維持がスムーズになるためです。
  • 2.テストステロン増加に役立つ食事を心がけましょう
    「ジャンクフードを避ける」「栄養バランスが整った食事を心がける」などの食生活の改善も、男性更年期障害の緩和に役立ちます。体の機能を作るたんぱく質のほか、ニンニクや玉ねぎなどの特徴が強い野菜、山芋のような粘り気のある食材は、テストステロンの増加に効果が高いと言われています。全体的な健康や更年期障害の予防や緩和のためにも、ぜひこれらの食材を積極的に取り入れましょう。
  • 3.しっかりと睡眠をとり、テストステロン減少を予防
    1日徹夜をしただけでも、テストステロンは2~3日ほど減少した状態が続くと言われています。リラックスした状態で十分な睡眠がとれていると、副交感神経が適切に働き、テストステロンの分泌が促されます。日中は活動的に過ごし、そしてしっかりと睡眠をとり、テストステロンの分泌を適切な状態に整えましょう。

10.まとめ

以上、更年期症状や原因、必要な対策について解説しました。これから更年期を迎える方、現在気になる症状がある方、更年期症状で苦しい思いをされている方にとって、今回の記事がお役に立てましたら幸いです。

更年期を迎える年齢は45歳から55歳のあいだで、現在の女性の平均寿命は80歳前後です。そう考えると、女性の人生は更年期を迎えた後も30年以上続くこととなります。女性ホルモンの保護が受けられなくなった状態でそれだけの長い年月を、過ごすことになるのです。

女性ホルモンが分泌されない状態で数十年を過ごすことに対し、実際に大変なことのように思われる方も多いかもしれません。しかし、更年期症状で大変な思いをされている方も多ければ、比較的症状が軽く、または快適な生活を送れている方が多いことも事実です。つまり、健康管理や医療機関での適切な治療、生活習慣の改善や必要に応じてのサプリメントの活用により、更年期の健康状態や生活の質はいくらでも変えることができます。辛く感じるのも快適に過ごすのもご自分次第だと考え、体をいたわる生活を意識することが、この先大きな助けとなっていくでしょう。

更年期を迎える年齢は、まさに人生の半ばに達したときです。体調管理に気を付けていれば、これからの第二の人生を楽しく過ごせるようになります。症状に惑わされず、これからの人生を活き活きと健やかに送っていくためにも、これまで以上に体を大切にして過ごしましょう。

ストレスをためず、規則正しい生活を意識し、医療機関での治療やケアで症状についての知識を深め、更年期症状と上手に付き合っていきましょう。

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