イライラや不安、のぼせやほてりなど、様々な症状が表れる「更年期」。
感覚的な不調だけでなく「骨粗しょう症」や「脂質異常症」などの疾患を患う可能性もあります。
そんな不調や疾患を予防したり、症状を少しでも抑えたりするためには、バランスのいい栄養摂取が重要です。
中でも、骨粗しょう症予防やストレス緩和などに重要な栄養素が「マグネシウム」。
この記事ではサプリメントインストラクターの筆者が、マグネシウムが重要な科学的な理由をご紹介します。
また、一緒に摂取したい栄養素をご紹介。
さらにマグネシウムの多い食品やその他の摂取方法もご紹介します。
更年期の辛い不調や疾患を予防するためにも、この記事を読んでマグネシウムの重要性を学び、適度な栄養摂取を心がけましょう。
1.更年期にマグネシウムが重要な理由
適度なマグネシウム摂取は、骨粗しょう症の予防やストレス緩和に重要です。
マグネシウムが更年期に重要な理由を解説します。
骨粗しょう症
マグネシウムは更年期の骨粗しょう症予防に重要です。
これには副甲状腺ホルモンである「パラソルモン」と女性ホルモンである「エストロゲン」が大きく関わります。
パラソルモンは、カルシウム濃度が低下した時に骨からカルシウムを溶け出させます。
そうすることで、血中のカルシウム濃度を高めて、カルシウム濃度を保ってくれるのです。
一方で、エストロゲンはパラソルモンを抑制します。
ですが、更年期以降にエストロゲンの分泌量が減ることで、パラソルモンを抑制できなくなるのです。
パラソルモンが抑制されなくなると、骨からカルシウムが溶け出す量が増えて、骨がもろくなり骨粗しょう症のリスクが高まります。
そこで、マグネシウムが重要です。
マグネシウムはパラソルモンを低下させる作用があるため、エストロゲンの分泌量低下によって抑制できなくなったパラソルモンを抑制してくれます。
そのため更年期以降は、マグネシウムを十分に摂取して骨粗しょう症を予防しましょう。
その他
他にもマグネシウムは、リラックス作用によって睡眠を深くすると考えられており、更年期に増えがちなストレス緩和にも重要です。*1
また、更年期以降に気になる心臓血管系疾患や高血圧の予防にも、マグネシウムの十分な摂取の必要性が示唆されています。*2 *3
このように更年期から更年期以降にかけて、マグネシウムの十分な摂取はとても重要なのです。
2.マグネシウムの必要量と合わせて摂りたい栄養素
ではマグネシウムはどれくらい不足していて、どれくらい摂取すればよいのでしょうか。
厚生労働省の資料を元にご紹介します。
マグネシウムの必要量
令和元年の国民健康・栄養調査結果(厚生労働省)によると、1日の平均的なマグネシウム摂取量は、40代女性が219mg、50代女性が233mgです。*4
一方、日本人の食事摂取基準(厚生労働省・2020 年版)によると、1日のマグネシウム推奨摂取量は30~64歳女性が290mgとなっています。*5
このように日本人の平均的な食事を摂っている場合、40代女性がおよそ70mg不足しており、50代女性はおよそ55mg不足しているのです。
昔の日本は、マグネシウムを含んだ粗塩が多く使われていました。
しかし精製塩が使われるようになったためマグネシウムの摂取量が減った上に、塩分の過剰摂取でマグネシウムの体外への排出が増えたと考えられます。
他にもマグネシウムを豊富に含む玄米ではなく、白米やパンなどを食べるようになったこともマグネシウムが不足しがちになった要因です。
平均的な食事にマグネシウムの豊富な食品やサプリメントを加えましょう。
カルシウムをあわせて摂ろう
カルシウムとマグネシウムの理想のバランスは、カルシウム2:マグネシウム1とされています。
カルシウムを十分に摂取することはマグネシウムを十分に摂取することと同様に、骨粗しょう症予防に重要なので、カルシウムもしっかり摂取したいところです。
令和元年の国民健康・栄養調査結果(厚生労働省)によると、1日の平均的なカルシウム摂取量は、40代女性が441mg、50代女性が472mgです。*4
一方、日本人の食事摂取基準(厚生労働省・2020 年版)によると、1日のカルシウム推奨摂取量は15~74歳女性が650mgとなっています。*5
このように日本人の平均的な食事を摂っている場合は、40代女性がおよそ210mg不足しており、50代女性はおよそ180mg不足しているのです。
骨粗しょう症予防に重要なカルシウムとマグネシウムの両方が不足しているため、平均的な食事では、骨粗しょう症のリスクが高まってしまいます。
そのためマグネシウムと一緒に、カルシウムが豊富な食品やサプリメントを、今の食事に加えましょう。
3.マグネシウムが多い食品
マグネシウムは、以下の食品に多く含まれます。
- 藻類:あおさ・あおのり・わかめ・昆布・ひじき
- 魚介類:干しエビ・しらす・あさり・はまぐり
- 野菜類:だいこん・落花生・ほうれんそう・枝豆・ごぼう
- 豆類:大豆・納豆・豆腐
- 穀類:五穀・玄米・そば
- その他:ごま・バナナ・ココア
無理せず、その日のメニューに合うものを1~2品加えてみてください。
また、サプリメントの活用もおすすめです。
カルシウムとマグネシウムが2:1のバランスで含まれているサプリメントも販売されています。
1つのサプリメントでバランス良くカルシウムとマグネシウムを補給できるので積極的に活用しましょう。
ただ、食品やサプリメントで摂取する場合、摂りすぎると下痢になりやすいので注意が必要です。
他にも「エプソムソルト(硫酸マグネシウム)」を入浴剤にして肌から吸収する方法もあります。
ネットで簡単に購入できるため、探してみてください。
4.まとめ
更年期には女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減ることで、様々な不調や疾患のリスクが高まります。
様々な栄養素をバランス良く摂取しなければなりませんが、中でもマグネシウムは更年期に重要です。
エストロゲンが減ることで抑制できなくなったパラソルモン(骨のカルシウムを溶け出させる)を、マグネシウムをしっかり摂取して抑制しましょう。
骨粗しょう症予防にマグネシウム摂取が重要です。
また、マグネシウムにはリラックス作用によって睡眠を深くしたり、心臓血管系疾患や高血圧を予防したりなどの作用が示唆されています。
更年期の不調やその他疾患の予防にも、重要な栄養素です。
厚生労働省によると日本人の平均的な食事では、マグネシウムの摂取量が足りていません。
また、マグネシウムとのバランスが重要なカルシウムも足りないため、マグネシウムとカルシウムの摂取量を増やしましょう。
マグネシウムが多い食品は、藻類・魚介類・野菜類・豆類・穀類などです。
サプリメントやエプソムソルト浴での摂取も可能なので、ぜひ検討してみてください。
マグネシウムを十分に摂取して、更年期の不調や疾患予防を行いましょう。
ライター:林本 直
元アスレティックトレーナー|サプリメントインストラクター保有
了徳寺大学健康科学部卒 元日本体育協会公認アスレティックトレーナー&NSCA-CSCS。
大学日本代表選手(ゴルフ、ビーチバレー)のトレーニングコーチや、ラグビーチームのトレーナーを経験。
現在はサプリメントインストラクターを取得し、ライターをしながらオンラインでボディメイクを指導している。
〈参考文献〉
*1
Magnesium supplementation improves indicators of low magnesium status and inflammatory stress in adults older than 51 years with poor quality sleep ー Magnes Res. 2010 Dec;23(4):158-68.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21199787/
*2
Circulating and dietary magnesium and risk of cardiovascular disease: a systematic review and meta-analysis of prospective studies ー Am J Clin Nutr. 2013 Jul;98(1):160-73.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23719551/
*3
The effect of magnesium supplementation on blood pressure: a meta-analysis of randomized clinical trials ー Am J Hypertens. 2002 Aug;15(8):691-6.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12160191/
*4
令和元年国民健康・栄養調査結果の概要 ー 厚生労働省
表 13 栄養素等摂取量(1歳以上、女性・年齢階級別)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
*5
日本人の食事摂取基準(2020 年版)ー 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
*6
マグネシウムの働きと1日の摂取量 ー 健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-mg.html